昨年9月に農林水産副大臣を拝命してはや1年が経ちました。農林水産省は、非常事態であっても緊急事態であっても国民の1日3食の食料を食卓に届けなければいけない責任があります。この一年を通じて国民への食料の安定した供給については、その重要性を強く認識させられ、さまざまな角度での施策の必要性を痛感しました。
また、日本は国土の面積が狭い中で、季節・気候が大きく違う地域が点在しており、それぞれの事情を考慮した上でさまざまな農業が行われております。それぞれの状況に応じた農業を進めていくためには、地域毎に独自に工夫をし、努力して頂かなければいけません。そしてそれを力強く進めていくためには、きめの細かい支援メニューを政府が用意する必要があります。まさに、国民への安定した食料の提供のためであります。
それぞれの農村は長い年月をかけてさまざまな努力を積み上げ、安全で美味しい食材を作り、多くの消費者に提供して来ました。そこでこの夏は、全国のあらゆる場所で頑張っている地域を視察し、今後の政策づくりに反映したいと思い、各所を訪ねて参りました。大いに参考となり、有意義なものでありました。
2021.07.12-13 北海道農業の視察
7月12、13日に、北海道の農林水産業の視察に行ってきました。
また、家具のニトリが余市町で運営している広大な観光果樹園にも伺いました。ニトリの経営ノウハウも活用し、15haの農園にサクランボやブルーベリーなどが植えられ、年間3万5千人以上の来場者が訪れます。農業と観光が融合して地域振興に貢献されている優良事例でありました。
2021.07.14 群馬県川場村視察
7月14日に、群馬県川場村の農村活性化の取組の視察に行ってきました。
人口3千人余りの川場村に年間200万人の観光客が訪れます。ファーマーズマーケット(道の駅)では、展示にも工夫を凝らすとともに、季節ごとの価格情報などを農家に提供することで、トウモロコシだけで年間700万円以上売り上げる農家を生み出すなど、高い収益を創出しています。
地場産の農産物や牛乳を使った加工品もパッケージや品質にもこだわり抜いて高い付加価値をつけています。(これは東京でも大人気です)また、売り切ることも難しかった地場産米「雪ほだか」のブランド化に成功し、現在では1俵22,000円で販売されています。それから、山を荒らす竹の有効活用に向け、東京農大と提携して、竹を発酵させた育苗用土の開発にも取り組まれていました。
2021.07.15 群馬県食肉卸売市場視察
7月15日には、群馬県玉村町にある食肉卸市場を視察してきました。
ここでは、牛や豚のと畜、加工、セリまでが行われています。と畜の現場も見ましたが、我々は生き物の命をいただいているという事実を改めて実感しました。また、当該施設は海外輸出に対応した高い衛生基準をクリアし、ここを通じて米国やEUにも牛肉が輸出されています。
施設は職人の手作業による高い技術によって支えられていますが、高齢化や人手不足による技術の継承が課題となっており、人材育成や省力化技術が導入された施設へ、国がリードして更新していくことが必要だと感じました。
2021.07.21 奈良県視察
7月21日に、奈良県の農林水産業を視察してきました。
奈良県では、木材利用の拡大に向けて都市部と山間部の自治体が連携して、森林環境税の有効活用について議論する先駆的な取り組みが行われています。現在、輸入木材価格が高騰するウッドショックが問題となっていますが、意見交換の場ではウッドショックを国産材活用のチャンスに変えていきたいという、前向きな発言も出ました。農林水産省も、こうした取り組みを支援し、国産材活用を推進してまいります。
また、天川村では、村主導による廃校を利用したふぐ養殖の取組を視察してきました。海のない奈良県の山間部でふぐを育てるという話題性によって、観光事業との相乗効果を狙おうという、大変ユニークかつ大胆な取り組みです。そして、治山事業の現場も見てきました。平成23年の豪雨災害の復旧事業であり、長い時間をかけて復旧を続ける中で技術の蓄積も進んでいます。近年多発する豪雨災害にも万全の備えを行ってまいります。
最後に田原本町で脱サラして農業に飛び込まれたイチゴ農家の方と意見交換を行いました。意欲ある新規就農者が農地の貸し手が見つからず苦労されているという話を聞きました。農林水産省でも、将来の農地の在り方について検討を進めている所であります。
2021.08.2‐3 愛媛県視察
8月2、3日に、愛媛県の農林水産業を視察してきました。
中村愛媛県知事との意見交換では、西日本豪雨からの復旧の取組、真珠の母貝であるアコヤガイのへい死、柑橘類の輸出などについて意見交換を行いました。
松山市の災害復旧の現場では、復旧をチャンスと捉えて、急傾斜地をなだらかにすることで作業性の向上を図るとともに、収益性の高い品種への改植を進めるなど、将来を見据えた復旧事業が行われていました。
久万高原町の林業研究センターでは、CLT(木材を組み合わせた高強度の板で、利用拡大が期待される)の研究施設や、新規就業者向けの研修施設を視察しました。また、危険の高い伐採技術を習得するための、バーチャル研修も体験させてもらいました。
宇和島市の水産物卸売市場では、コロナによりタイやアマダイなどが影響を受けていることや、給食や姉妹都市などと連携した消費拡大の取組について伺いました。また、市場は改修を契機に機械導入による省力化が進み、漁業者の意欲向上につながるとともに、遠方から荷が集まるなどの相乗効果が出ているという話も伺いました。
また、同市のみかん研究所では、農家の所得向上を支える新品種開発の取組について伺いました。新品種では慣行品種の倍以上の収益が得られています。
2021.08.4 兵庫県視察
8月4日に、兵庫県の農地利用の推進の取組を視察してきました。
兵庫県で担い手・農地対策を一元的に進めるために農地バンクと農業会議所を統合して立ち上げられた、「ひょうご農林機構」と意見交換を行いました。
ここでは、地域全体の農地を、営農を継続する人の分も含めて一度バンクが借り上げ、改めて農業者に貸し付けるという取組を進めています。この取組によって、営農をやめた際には速やかに後継者を張り付けることができ、担い手への集積や耕作放棄地発生の防止に役立っている優れた事例です。
また、淡路市では、市や土地改良区が農地を集積し、公募をかけて内外の企業に貸し付ける取り組みが進められています。建設業から参入された企業では、農業収入が本業の収入を上回ったという話も伺いました。担い手対策として、企業参入も重要な選択肢の一つだと思いました。
2021.08.5 鹿児島県視察
8月5日に、鹿児島県さつま町、薩摩川内市、伊佐市の豪雨災害の現場を視察してきました。
河川の決壊や、道路の崩落などにより、農地やハウス、鳥獣被害対策の侵入防止策などが被害を受けていました。前年の災害で被害を受けた個所と同じ個所が被害を受けている事例もあり、改良復旧などの先を見据えた復旧事業の要望がありました。また、国土交通省の管轄と入り組んでおり、政府一体となった対策を進めていく必要を痛感しました。
2021.08.6 成田市場視察
8月6日に、千葉県の成田市場を視察してきました。
成田市場は、耐震工事の必要性や老朽化を背景に、輸出手続きができる新たな拠点として整備が進められています。
コールドチェーンが整備され、活魚水槽エリアや輸出専用棟なども整備予定であり、輸出拡大の拠点として期待しています。また、展望デッキや、集客エリアの整備などの新たな試みも行われており、そうした観光拠点としての機能についても注目しています。